深く暗い海底に沈み

精神的に落ち込んだときの記録

景色をともに 10


 ぼくは図書館にいて、ガラス向こうの夏の終わりの陽ざしを浴びる木々が風に吹かれてゆらめいているのを見ながら、木と木をつなぐ、たった一本のくもの糸を見つけた。それは木々が揺れるたびに光を反射し現れてはまた消え、目を凝らしても光の助けがないとぼくの目には見えなかった。ぼくはしばらくそのさきにある研究棟の屋根の陽炎のほうを長く眺めた。不意に重なるそれらは、いつだって彼を思い出させた。